富士山の山開きの季節になりました。
今年は初日から大荒れで、遭難死者が3名も。
みんな60代~70代。
山梨県側ルートが規制が厳しくなったので、静岡県側にいわゆる「弾丸登山」の登山客が流れたようです。
そんな大荒れの天気の中、知り合いは富士山に登っていました。
下山してくる人から、頂上は悪天候だからやめといたほうがいいと言われたのに、
天気が回復しているに違いないと祈りながら登って行ったら、
素晴らしい景色がみえたとSNSに写真がアップされていました。
下山途中では台風のような暴風雨に吹き飛ばされそうになったけど、
なんとか無事に着いて、修行のような達成感を感じましたという投稿。
読者も「いいね!」っていう反応でした。
これを読んで、山を甘く見ている無謀な登山だな~と思いました。
私より年長の方々で、人生経験も豊富なはずだけどね。
祈ったからといって天候が回復するわけがない。
無事に帰れたのはたまたまでしょう。
自分だけは大丈夫というバイアス。
遭難したら、周りにどれだけの影響や迷惑をかけるか想像できないのでしょうか。
私が大学生の頃、同じ学部の同級生が山で遭難する事故が2件起きました。
1件は、日帰り登山の途中で道に迷い、2週間後に瀕死の状態でヘリコプターで2名救助。
今のように携帯もLINEもなく、いつどこの山に登ったのかすらわからず、初動捜索も難航しました。
警察が捜索を打ち切った後、親があきらめきれず、民間のヘリに依頼して1日で見つかったそう。
2週間の間、山の中で空腹と絶望と戦い、生き延びた状況は壮絶だったと聞きました。
その後、救助費用をめぐって、両家の間でもめたそう。
もう1件は冬山単独登山で遭難死。
登山部のリーダーで経験はある人だったのに。
年末年始の悪天候で遭難事故が同時に複数起きました。
遺体の収容にはかなり時間がかかったと聞きました。
相次ぐ遭難事故で大学では、山の危険性について講義を行いました。
今でも覚えているのは
- 中止する勇気
- 引き返す勇気
- リーダーや年長者が行くといっても、異を唱える勇気
- 日帰り登山であっても夜を越せるだけの装備
- 未知の沢は下るな、尾根道を下れ
- 熊、スズメバチ、毒ヘビ対策
- 登山経験者に計画を見せて、アドバイスをもらうこと
- 登山届を出すこと
といったことです。
なんとなく人生にも通じるような気がします。
恋愛や結婚、転職で、「これは止めといたほうがいい」というアラームが心の中で鳴ったら、それを信じること。
上司や主張の強い人の意見に流されてはいけない。
危険な人物や場所には用心すること。
新しいことをする前には、入念な準備や調査をして、周りの経験者からアドバイスをもらうこと。
私はどちらかというと、用心深く、石橋を叩いて渡るタイプの人間です。
なので私には、無謀な登山をする人達の気持ちが理解できません。
毎年、富士山で無謀な登山のニュースを見るたびに、学生時代の悲しい遭難事故を思い出します。