今回の旅行では、糸魚川静岡構造線のある早川町に滞在した後、甲府に1泊して勝沼ワイナリー巡りをしました。
甲府から中央道を松本方面へ走り、茅野から「秋葉街道」を南下していきました。「秋葉街道」は中央構造線に沿って走る国道152号線です。この道に沿って、中央構造線の露頭がいくつかあるので、立ち寄りました。途中、パワースポットとして有名な分杭峠、大鹿村中央構造線博物館を訪ね、大鹿村の鹿塩温泉に宿泊し、翌日はさらに南下し浜松を目指しました。
今回、立ち寄った大鹿村中央構造線博物館のホームページには、露頭の詳細な説明が載っていますので、リンクをはりました。
諏訪大社上社前宮から急な山道を上がり、杖突峠を超えるとなだらかな地形になります。藤沢川という小さな川に沿って、中央構造線が通っています。
西側は急傾斜の山、東側は比較的ゆるい傾斜の山です。
板山露頭
最初の露頭である「板山露頭」にやってきました。
国道からの入り口が分かりにくいですが、小さな標識に従って細い道を行くと、入口のゲートが閉まっていますが、自分で開けて入ります。
遊歩道沿いに幅10m程度の露頭があります。右側は黒っぽい岩石(結晶片岩)で外帯、左側はやや白っぽい岩石(花崗岩)の内帯があり、その境界が「中央構造線」です。
丁寧な説明が書かれた案内板がありますので、初めての人でもよくわかるかと思います。
この断層をたどって林道を上がっていくと、そこには神社があります。
山の上にある神社から谷を見下ろすと、中央構造線の作る地形がよく見えます。
ここに神社を作ったのには、意味があるのでしょうか。
板山露頭をあとにして、高遠の町へ入ります。
桜の時期であれば、高遠城址はきっとにぎわっていたかと思いますが、あいにく時期は過ぎていました。
杖突峠から高遠までは藤沢川が南へ流れていますが、ここで急に流れを西へ変えて、南から流れてきた三峰川と合流し、伊那で天竜川と合流します。
高遠城址公園の高まりを避けるように、藤沢川と三峰川が西へ流れを変えています。
高遠城址公園の東側に中央構造線が通っているので、断層の動きと地形に関係があると思われます。
溝口露頭(美和湖)
「道の駅南アルプスむら」にあるビジターセンターには、分杭峠や中央構造線の資料がたくさんあるので、ぜひ立ち寄ってみましょう。
溝口露頭への入り口は細い道なので、うっかり通り過ぎないように気を付けてください。
湖に張り出した岬のようなところに溝口露頭があります。
板山露頭と同じで、右側(写真奥)は黒っぽい岩石(結晶片岩)で外帯、左側(写真手前)はやや白っぽい岩石(花崗岩)の内帯があり、その中間の茶色いところは破砕帯となっています。
破砕帯の両方の境界が「中央構造線」と案内板には書いてあります。
美和湖越しに見る分杭峠です。V字型に切れ込んだ谷が中央構造線の通る分杭峠です。
峠というのは、谷筋から登ると一番高いところ、尾根道を歩くと一番低いところということがよくわかります。
分杭峠
美和湖をあとにして、これまでとは逆に北へ流れる川(三峰川)を上流へさかのぼり、分杭峠へ向かいます。
ここはパワースポットとして有名になったため、マイカー規制があります。
峠手前のお土産物屋さん(粟沢駐車場)に車を止めて、シャトルバスで峠に向かいます
(単に峠を通過するだけなら、そのまま通れます)。
とてもフレンドリーなおじさんが、ゼロ磁場のお水やお米を売っています。
この峠は「ゼロ磁場」と呼ばれ、方位磁針が正しい方位を指さないといわれています。
今回、方位磁針をもって峠に向かいました。このお土産物屋さんの机にも方位磁針がおいてあり、やはり異常な動きをします。地面に近いところに方位磁針を近づけると、針がグルグルまわり、北から45度くらい動きます。
お土産物屋さんのおじさんが、GPSがついたスマホをここで動かすと、異常な動きをしました。
高級なカメラは壊れることもあるそうです。
シャトルバスに乗って峠に向かいますが、道は狭くグネグネとして、対向車が来たらすれ違うことは難しそうです。
20分ほど走って、沢がなくなる分水嶺の峠まで到達しました。
これまで車で上がってきた北へ流れる沢(三峰川の支流の粟沢川)を見下ろす木のベンチに座り、手のひらで「氣」を受け取ります。
鈍感な私には、何も変化は感じられませんでしたが、少し元気をもらえたのかな?
この日は小雨が降り、とても寒かったので、10分もいなかったかと思います。
標高1200mもあるので、かなり冷えました。
冷えたせいか、磁場の影響なのか、日ごろからあまり調子がよくない右手首の痛みを感じました。
夫も膝が痛くなったそうです。
再び、シャトルバスで駐車場に戻り、車で今、通った道を進みました。
ちょうど、シャトルバスが前にいて、すぐあとをついていったので、対向車の心配はありませんでした(ラッキー!)。
大鹿村中央構造線博物館
分水嶺である峠を超えると、沢は南へ流れる「鹿塩川」となります。
ここから大鹿村までの道は、川の周りに花桃が咲き、古い家屋が絵になる素敵な景色でした。
「ザ・日本の田園風景」という感じで、ゆっくりと写真を撮ったり、絵を描きたいなと思うような風景です。
大鹿村中央構造線博物館に着くと、庭には大鹿村の中央構造線周辺にみられる岩石標本が地質構造帯に沿って配置されています
これはすごいと思います。作るのにはかなりの労力がかかっているはず。
実際の中央構造線もこの博物館のすぐそばを通っているそうです。
中に入ると、展示室奥の壁に北川露頭の剥ぎ取り標本が、どどーんと存在感を放っています。
この露頭は、現地ではだいぶ崩壊して断層面は見えにくくなっているそうですが、この博物館にくればきれいにみえます。
このように保存しておくことは、学術的にも大変意義のあることです。
標本左側は白っぽい内帯の領家帯、右側は黒っぽい外帯の三波川帯です。
誰の目にも明らかに境界線が見えますね。
中央構造線の断層は1本ではなく、地質境界としての断層は左側の断層で、岩石の色が白っぽいものと黒っぽいものとの境界です。
それとは別に、右側にも断層がみられます。この間の地層は断層破砕帯と呼ばれます。
この標本の中央構造線は床の絨毯の色の違いとして続き、さらに展示室中央の立体地形模型の中央構造線にもつながるように展示されています。
模型のピンク色の部分が内帯の領家帯、緑色の部分が外帯の三波川帯です。電動で動き、断面が現れます。
室内には岩石標本が中央構造線を挟んで、実際の分布を再現するように展示されています。
なかなか他ではみられない「マイロナイト」は必見です。
マイロナイトとは、断層運動によって、高温下でゆっくりと変形してできた岩石で、流れるような組織が特徴です。
学芸員さんの詳しい説明を聞きながら、日本の地質はなんて複雑で、ダイナミックな動きをしているのだろうと感嘆しました。
日々、眺めている景色の成り立ちが、このような地質構造運動によってできていると思うと、見え方も違ってきます。
この日は、ここで夕方になり、今晩の宿の鹿塩温泉に向かいます。
鹿塩温泉
鹿塩温泉はその名の通り、塩分濃度の高い温泉で、海水とほぼ同じ濃度(約4%)だそうです。
今宵のお宿は、日本秘湯を守る会の「山塩館」。
宿のご主人は温泉水を使って塩を作っているそうで、お土産に1つ購入しました。
お楽しみの温泉にさっそく入ります。
泉質は、「ナトリウム-塩化物強塩冷鉱泉(弱アルカリ性高張性冷鉱泉)。
解放感のある大きな窓の浴場で、緑がいっぱいです。
塩の効果で、とてもよく温まりました。
夕食は個室の食事処でいただきます。
地元の山のものを丁寧に調理した品々が順番に運ばれてきました。
鯉の煮つけや鹿のロースト、山菜の天ぷら、ゴマ豆腐など、どれも美味しかったです。
もちろん味付けは、ここで作った塩です。
朝食もシンプルな定番メニューですが、なかでも地元のお豆腐に山塩を付けていただくのは美味しかったです。
炊き立てのご飯がおいしくて、たくさん食べてしまいました(ふだん、朝食はほとんど食べないのですが、なぜか温泉に泊まると朝から、たっぷり食べられます)。
朝食後、もう1回温泉に入って、まったりしました。
安康露頭
チェックアウト後は、安康露頭に向かいます。
細い山道を上がっていくと、案内板があります。
河原に降りていくと、対岸に露頭が見えます。
ここにも丁寧な看板があるので、解説を読んでから見に行きましょう。
写真右半分の黒っぽいところが外帯の三波川帯です。左半分の縞模様の部分は内帯の領家帯の破砕帯です。
この露頭で地形と地質を十分堪能した中央構造線の旅は終わり、浜松を目指して、南下していきました。